昔、お付き合いしていた方からダイヤモンドを頂きました。
え?なんでダイヤモンドなの?プロポーズでもないのになぜ?なんか怖い。
実用的な物が好きなタイプで目立つ装飾品は使いどころがない。できれば自分で選びたいし、高価なものを何の理由もなく貰うのは怖い。と思ったのが当時の感想です。
なぜ人はダイヤモンドを贈りたがるのか?の問いに意外な本が答えをくれました。
この記事はで読むことができます。
なぜ急にダイヤモンドの話かというと、「進化心理学から考えるホモサピエンス」を読んでいたら、この本が長年忘れていた「なんでダイヤモンドなの?」の問いに答えてくれたのです。
この本では、通常他の生物とは別ものとして社会科学の分野で扱われる人間の行動について、進化心理学の観点からの答てくれる本です。
「男と女はなぜこんなに違うのか?」「なぜセクハラはなくならないのか」という様にQA形式で一般の読者を対象に書かれているため、専門知識がなくても読み進められます。
著書では鳥や魚、ライオンや猿と同じ様に生物として大きな枠の中で人間を扱っています。生存をかけて進化し、生き残ってきた生物の本能的行動から男女の違いを読み解く。という切り口で読むのが楽しみ方です。
生き物としての生存本能が現在の人間社会で正しい行動か、善か悪かは関係ありません。すべては、それが生き残るために有利だったから。という答えにいきつきます。本能なら仕方ないかと感じたり、妙に納得できたり、時々笑えたり、ショックを受けたりします。
「進化心理学から考えるホモサピエンス」が教えてくれた答え。は「ダイヤモンドは究極の貢物」ということ。
「Q.女たちはなぜダイヤモンドに目がないのか」
「進化心理学から考えるホモサピエンス」Audible版 3:45:01
まず問いに賛否両論ありそうですが、自分とは問いは真逆の目線の問いに、多くの気付きがありました。
女性は、自分と自分の子供に投資を続けてくれる相手を見極めなければならなかったという話がでてきます。
そういえば、高価で実用的な価値のないものを貢物として要求して相手を見定めるというエピソードは、昔話にも登場します。貢物で複数の求婚相手の中から結婚相手を決める。というおとぎ話は、遥か昔から行われていた生存戦略の話だったのか。と新たな発見です。
貢物は、まったく実用的でない上に、高価という事がとても重要なのだそうです。
確かにおとぎ話の中でも、宝玉の生る木とか竜の玉とか使い道のなさそうなものを命がけで探しに行きます。
家や車、花ではなく、持っていなくてもまったく生活に困ることの無いダイヤモンドは、現代版の貢物として自然と定着したのかもしれません。
さらに、男性側にも貢物としてダイヤモンドを贈るメリットがあるらしいのです。
実用的な物にしか関心がない「黄金泥棒」をふるいにかける効果があるとか…
先に紹介した「進化心理学から考えるホモサピエンス」では、自分の様な実用的な物を欲しがるのは「黄金泥棒」とされました。ショックですが、面白いし納得する部分もあります。
欲しいものだけもらって「さよなら」って話は、かなり昔から起きていたのでしょう。色恋の詐欺は太古の昔からあったと考えると、現代でも本能的に騙されてしまうのは悲しい事実です。
しかし、自分はこの著書では考慮されていない別の理由で、突然ダイヤモンドを貰ってもまったく喜べなかったのです。そして、高価な貢物を買えることは信用のおける相手かどうかと別の問題だと考えています。
急に、欲しいと言ったこともない高価なものをプレゼントしてくる相手は、お財布を共にしたあと自分に相談なくに勝手に大金を使う人の可能性があると思うのです。
自分が友人たちから聞いた、相手の金銭感覚と価値観の違い気付いて後悔したというエピソードを紹介します。
- 場所も間取りも相談なしに、勝手に家を買って二人で住もうと言われた話。
- 既に二人で住んでいる家があるにもかかわらず、ある日突然「マンション買ったよ!」と報告された話。
- 高級スポーツカーを買って、自宅以外の場所に保管していた事をかなり後になって知った話。
- 自分が貰ったのとは違うダイヤモンドの保証書を見つけた話。
この様に、高価なものを買えるだけの資産があることは、必ずしも安心に繋がらないという事が友人たちの実体験から証明されてしまっています。
大切なことを相談しないで勝手に決めるタイプは、相手の都合や気持ちを完全に無視して物事を進めます。本人に悪気はなさそうですが、むしろ何で相手が喜んでないのか分からないのです。
後半の2つは、もちろん隠していた理由に問題があります。一番隠しておきたかったであろう”別の人物”があぶり出され泥沼の闘いが始まります…
当時は友人たちのエピソードで、相談しないで高価なものを買う人=自分の事しか考えていないか、平気で浮気する人。とイメージが付いてしまい、突然のダイヤモンドに本気でビビッてしまったのでした。
もう一つ素直に喜べなかった理由は、デザイン。
クローゼットにしまったまま、身に付けない理由はデザインです。主張が強くてパーティや会食の様な席に出るときに付けようと思って、そんな機会が一度もありません。
しかも、鑑定書どころか出処も不明。某有名中古ブランド品店の包装紙に包まれていました。
中身が何か知る前から、なんか怖い。
中身を見てからも、彼が言ったのは「困った事があった時は売ったらいいよ」の一言です。とっさに「あぁ。誰かが生活に困って祖母の形見を質に入れたんだろうな…」と想像してしまったし、そう想わせるデザインなのです。
いらないとも言えず、説明もないし「似合わないね」と言われ、どうリアクションすれば良かったのか謎です。幸か不幸か早めに二人の価値観の違いに気付けた事は、二人にとってプラスでした。
早速査定に持ち込み、ダイヤモンドの買取は買った時の1/3になるとしつこく説明を受け、一先ず本物ということは分かりました。もちろん売らずに買取額だけ聞いて帰ってきましたが、2件で査定して店によって査定額にだいぶ差がありました。改めて思ったのはやはり、なぜダイヤモンドなのか?
個人的に納得のいく答えが持てたのは、ダイヤモンドをくれたお相手とその仲間内でプレゼントについて話題になったときです。彼は、自らダイヤモンドをプレゼントしたことを自慢げに話していました。
そんな彼を見て「あっ。この人完全に自分に酔ってるな。」と感じて納得したのです。
ダイヤモンド=女性が喜ぶ物=プレゼントできる男はかっこいい
みたいな満足感で溢れていました。
なぜダイヤモンドをプレゼントしたの?と聞く友人に対して「ダイヤモンドぐらい買えるし。それぐらい普通でしょ。」
相手が欲しいかどうか、好みのデザインか、贈る理由とか彼には必要なくて、ただ買えるからだったのです。
買った本人が満足してるのだから、それでいいじゃないか。モヤモヤした気持ちと一緒にダイヤモンドもクローゼットの奥にしまったのでした。
「進化心理学から考えるホモサピエンス」を読んだ今ならこう説明できます。
高価で実用的価値のないものを貢物として選ぶのは、女性の生存戦略以外にも、男性にとって見栄とプライドを誇示するための道具としても選ばれる。
宝飾品に興味がなくても、欲しい人の気持ちが分からない訳ではありません。
自分の想う世の中の女性は、ダイヤモンドという石が欲しいわけではなく、ジュエリーとしてのダイヤモンドが欲しいはずです。普段から欲しいと思っている人ほど情報に敏感で、好みのデザインやサイズ感・色もイメージしています。
一般女性はコレクターではないのです。現物投資として欲しいなら他の物にするでしょうし、身に付けてテンションを上げたいのですから、好みのデザインかどうかはとても重要でダイヤモンドなら何でもいいと思っている訳ではないのです。
当たり前ですが、独断と偏見でダイヤモンドを贈るレアな人以外は、ダイヤモンドを買う前に相談するのが自然な流れでしょう。
どんなダイヤモンド欲しい?と聞かれたら、指輪なのかネックレスなのかピアスなのか想像を始めた瞬間からがダイヤモンドにまつわる思い出として残ります。記念日やプロポーズだったらその時の緊張感や嬉しさ、感動、受け取るまでのストーリーが加わって、一生忘れられない特別なエピソードがダイヤモンドに込められます。
そうなると、普段しまってあるか、毎日身に付けているかは関係なくて、ダイヤモンドを見ただけで当時の気持ちや思い出が蘇ってくる。思い出があるからダイヤモンドが永遠に輝いて大切されるのではないかと個人的に思います。
ロマンチックすぎるかもしれませんが、簡潔に言うと実用性のないものに求めるのは、それが与えてくれる心地よい感情か連想される何かでしかないのです。
進化心理学とは、人の善悪の判断基準とは別に、生き物としての行動に意味付けが行われる面白い学問だなと感じました。
実際はもっと複雑な要素が入り交じっていますし、すべての人が同じ様に行動していないという矛盾も感じる荒い解像度ですが、そのおかげで難しく考えずに読み進められます。話のタネとして良いなと思います。
人の進化歴史としては、ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福」の方が圧倒的に情報が濃密で壮大、読み応えがあります。読み応えがありすぎて、急に「サピエンス全史」の内容を話題にしても、読んでいない人(興味のない人)には面白みが伝わらない可能性が高く、面白く伝える語彙力と要約の上手さに自信がないとなかなか話題に出せません。
解像度が一般人向けである「進化心理学から考えるホモサピエンス」から入って、興味が湧いたら「サピエンス全史」を読んでみると、あの分厚い本を制覇できるかもしれません。